2023年 第15回 京都

NFBT第15回京都大会について

日時:2023年9月30日(土)〜10月1日(日)
会場:京都テルサ
   https://www.kyoto-terrsa.or.jp/parking/

大会長:伊東優(カウンセリングオフィスSHIPS)

テーマ:ブリーフセラピーらしくないブリーフセラピー
―ブリーフセラピーの多様性―(仮)

 前回第14回大会では、大会テーマ「ブリーフセラピーにとってのアイデンティティとは」を受けて、ブリーフセラピーに通底する認識論、哲学、態度・姿について、つまりブリーフセラピーらしさについて参加者同士でディスカッションを深めました。それは、個人の内的資質よりも個人間の相互作用やシステムに着目し利用していくこと、個人の自立よりもシステムのもつ自己制御性・自律性を活用すること、過去・原因論から脱却して未来志向であること、変化を志向し短期的であること、個人のフレーム・ストーリー・ナラティブを尊重していくことなどあげられます。
 ある特徴を取り上げると、特徴に当てはまるもののと当てはまらないものとを二元論的に区別することができ、それは差別化・区別化に役立ちます。ブリーフセラピーの特徴を表現することは、ほかのセラピーとの比較において差別化を図ることとなります。ただその一方で、その特徴を備えるか否かこそが本質であるとみなしてしまうと、「こういうことはブリーフではしない」「こういうケースはブリーフらしくない」というようなメッセージにもつながっていきます。しかしながら、そうしてセラピーのあり方を限定していくことは、かえってブリーフセラピーらしさを失わせることにはならないだろうかと危惧します。
 たとえば、精神分析批判が目新しい時代は終わりました。それはブリーフセラピーにとっても短期治療であることが差別化につながらないことを意味します。そもそも精神分析との対比で生まれたブリーフという概念は、いま価値があるのでしょうか。ブリーフセラピーを謳っても、現場ではどうしても長期的な関わり・支援が必要なケースに出会うこともあるでしょう。頻回なセッションを希望するクライエントに出会うこともあるでしょう。
 たとえば、学会発表、ケース検討の準備において、「このケースはブリーフセラピーらしくできたから発表できるな」「このケースは100回もやってしまっているから発表できないな」といった発想でケースを選んだ経験はないでしょうか。ブリーフセラピーの学会なのだから、ブリーフセラピーらしくないことは語ってはいけないという雰囲気を感じてはいないでしょうか。
 長谷川先生は、ブリーフセラピーの特徴を「あれかこれか、ではなく、あれもこれも」と表現しました。過去や原因論にフォーカスする、長期に及ぶセラピーをおこなう、長期的支援を前提にかかわる、個人セッションに終始する、セルフケア・自立を促す、傾聴に徹し続ける、ゴールセッティングをしない、課題を出さない、ユーモアがない、コンプリメントがない、クライエントと対決する、セラピストが発言・質問しない、マニュアルに沿ってセッションを進める、自由連想をする、箱庭をする、一向によくならない症状に向き合い続ける、先の見えぬ未来に一緒になって途方に暮れる、といった支援を余儀なくされるケースは実際にありえます。そのような、一見ブリーフセラピーらしくないものにもブリーフのエッセンスを活用していくこと、ブリーフ的に理解することはできるでしょう。
 こうしたものの理解には、論理階梯の理解が役立ちますが、全ての言説を説明原理として扱うこと、特定の戦略・介入や技法、プロセスを絶対視せずに相対主義的な視座に立つ実用主義的認識論こそブリーフらしさといえるのではないかと考えます。システム論、相互作用論も、未来志向、解決志向的発想も説明原理であり、拘泥することがブリーフなのではありません。 それが科学だろうと、占いだろうと、宗教だろうと、どんなものでも絶対視せずにクライエントにとって問題にとって役立ちそうなら採用するという自由さ、徹底的な実用主義がブリーフセラピーをブリーフセラピーたらしめると考えます。
 「こうしないとブリーフではない」「ブリーフならこうする」といった発想がある場合、そのメッセージを発しているブリーフセラピスト自身が、ブリーフセラピーとはかくあるべきというフレームにとらわれてしまっているのではないでしょうか。ブリーフセラピーらしくあろうとすることが、かえってブリーフセラピーとしての自由度を狭めることになっては本末転倒です。すべての事象をブリーフの視点で切り取ること、すべてのセラピーをブリーフセラピーとして見立てることが可能な相対的主義的な認識論が、ブリーフセラピーにはあります。「どの療法が優れているか」「ブリーフならこう見る」といった視点から一段メタな視座に立ち、実用主義のもとにブリーフセラピーの多様性を再認識する、そのような大会にしたいと考えています。
 参加者の皆様には、是非ブリーフセラピーらしくないケースの事例発表を期待します。ただクライエントの語りに耳を傾け課題提案しなかったケース、他流派が行うようなアプローチが奏功したケース、何年も何百回も面接を行ったケース、それらもブリーフセラピーの視点で関わったならブリーフセラピーです。どのようなケースも、一緒にブリーフセラピーの切り口で分析・考察していきましょう。それがブリーフセラピーを、ブリーフセラピストをもっと自由にするはずです。

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